株式は上場廃止で紙切れになる?廃止後に起こることと儲かるケースを解説

保有している株式の発行会社が業績悪化などにより上場廃止すると「今持っている株券の価値がなくなるのでは?」と不安になっている方もいるでしょう。確かに上場廃止した株式は、紙切れになる可能性は否定できません。しかし、ただちに無価値化するわけではないため、早急に売却することで損失を抑えられる可能性があります。

本記事では、株式が上場廃止される理由や、上場廃止により起こることなどを解説します。上場廃止した株式で利益を得る方法にも触れているため、ぜひ参考にしてください。

目次

株式は上場廃止で必ず紙切れになるわけではない

株式 上場廃止 紙切れ

上場企業の株式が上場廃止になると、一般的に価値がなくなると考えられがちですが、必ずしもそうではありません。

たしかに経営破綻が原因で上場廃止になった場合、基本的に株式の価値は失われます。しかし、株式保管振替機構が定める以下4つの条件をすべて満たせば、上場廃止後も株式の取引を継続できます。

  1. 会社の解散、民事再生手続開始の申立て、会社更生手続開始の申立てのいずれかによる上場廃止である
  2. 発行会社が機構の定める業務処理の方法に従うことを再確認している
  3. 発行者と指定株主名簿管理人との契約が継続している
  4. 発行者が機構の定める手数料を支払う

すでに上場廃止してしまった株式を持っている方も、上記に当てはまっていないか確認してみてください。

そもそも上場廃止とは?

上場廃止とは

上場廃止とは、金融商品取引所に上場している株式(上場銘柄)が、その取引所で取引できなくなることを指します。上場企業が上場を廃止する主なパターンは、大きく分けて以下の2つです。

  • 各取引所が定めている上場廃止基準に該当した企業が取引所から強制的に上場廃止になる
  • 上場企業自らの申請により、自主的に上場を廃止する

なお、上場廃止が決定しても通常はすぐに取引できなくなるわけではありません。

上場廃止が決まった銘柄は「整理銘柄」に指定されます。整理銘柄は上場廃止により自由な取引が難しくなるため、投資家に注意を促す目的で設けられた仕組みです。

整理銘柄に指定された銘柄は、原則として指定から1ヶ月間は取引が継続され、その後に上場廃止されます。

株式が上場廃止になる理由

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株式が上場廃止になる理由は、以下のとおりです。

  • 上場維持基準に対して不適合な状態を1年以内に改善しなかった
  • 有価証券報告書などの提出遅延があった
  • 報告書に虚偽の記載や不適正意見があった
  • 特別注意銘柄に該当した
  • 上場契約への違反があった
  • 経営戦略により自主的に上場廃止した
  • その他の理由

ひとつずつ押さえておきましょう。

上場維持基準に対して不適合な状態を1年以内に改善しなかった

上場維持基準に対して不適合な状態を1年以内に改善しなかった場合、株式は上場廃止されます。

金融商品取引所は上場企業に対して一定の基準を設けており、上場を維持するために満たしていなければなりません。上場維持基準の主な項目は、以下のとおりです。

  • 株主数
  • 流通株式数
  • 流通株式時価総額
  • 流通株式比率
  • 1日平均売買代金
  • 月平均売買高
  • 時価総額
  • 純資産

上場企業が上記の基準を満たしていない場合、原則として指摘を受けてから1年以内に再び上場維持基準を満たす必要があります。そして1年以内に改善が見られない場合は、取引所が上場廃止の判断を下します。

ただし売買高の基準については6ヶ月、流通株式比率や純資産の額については例外規定が別途設けられています。項目によって期間が異なる場合があるため、見逃さないように気を付けてください。

有価証券報告書などの提出遅延があった

上場企業には、定められた期限までに有価証券報告書や四半期報告書の提出が義務づけられています。しかし、何らかの理由で報告書の提出が法定提出期限を経過してから1ヶ月以上に渡って遅延した場合、上場廃止になる可能性があります。

有価証券報告書などには、投資家にとって企業の財務状況を判断するうえで重要な情報源である監査報告書や四半期レビュー報告書を添付する必要があります。そのため、提出期限が定められているのです。

ただし、提出期限の延長が承認されるケースもあります。この場合は、承認された期間の経過後8日目までに提出することで、上場廃止は避けられます。

報告書に虚偽の記載や不適正意見があった

上場企業が提出する有価証券報告書や監査報告書、四半期レビュー報告書への虚偽の記載は許されません。虚偽の記載が金融商品取引法違反に当たります。

監査報告書などに「不適正意見」が記載された場合も、企業の財務諸表が適正に作成されていないことを意味します。

有価証券報告書や監査報告書などは、投資家が企業の実態を正しく理解するうえでの重要な情報源です。

虚偽の記載があったり、監査人から不適正意見や「意見を表明しない」といった内容が記載されていたりすると投資家の不利益を被りかねないことから、上場廃止になる可能性があります。

特別注意銘柄に該当した

内部管理体制に問題があると判断されると「特別注意銘柄」に該当し、改善の見込みがないと判断されると上場廃止となります。

特別注意銘柄とは、以下の要件をすべて満たす銘柄のことです。

  • 上場廃止基準に抵触するおそれがある
  • 金融商品取引所の審査で上場廃止に至らなかった
  • 内部監理体制などの改善が必要だと取引所に判断された
  • 投資者への注意喚起を図る必要があると判断された

指定後に改善の見込みがなく、指定から1年経過後の審査で内部監理体制などが適切に整備・運用されていないと認められると、上場が廃止されます。

また、一度は改善が認められたとしても、経過観察として特別注意銘柄の指定が継続された後に再び内部管理体制などに問題が生じた場合も、上場廃止となる可能性は残っています。

上場契約への違反があった

上場企業は金融商品取引所との間で上場契約を締結しており、定められた事項を遵守する必要があります。しかし、上場企業が上場契約や新規上場申請時の宣誓事項に関する重大な違反を犯した場合は、上場廃止となる可能性があります。

また、以下のような事情により上場企業が上場契約の当事者でなくなる場合も、上場廃止の対象です。

  • 合併
  • 株式交換
  • 株式移転

新規上場企業であれば上場申請時の宣誓書に記載した事項に違反し、新規上場の基準に適合していなかったと取引所に認められた場合、1年以内に審査を再度受ける必要があります。再審査に通過できなかった場合も、上場廃止となります。

経営戦略により自主的に上場廃止した

経営戦略の一環として、自主的に上場廃止する企業もあります。必ずしも経営の悪化や倒産といったネガティブな理由だけで、上場廃止されるわけではありません。

自主的な上場廃止の代表例が、MBO(マネジメント・バイアウト)による非上場化です。MBOとは、企業の経営陣が外部の投資家と協力して自社の株式を買い取り、非上場化を図る手法のことです。

上場を維持するには、株主への配当や情報開示など多額のコストがかかります。また、株主の意向に配慮する必要があるため、経営の自由度が制限される面も上場するデメリットのひとつです。

しかしMBOによる非上場化を選択することで、上場に関するコストや制約から解放され、長期的な視点に立った経営戦略を推進しやすくなります。

このように、上場廃止は必ずしもマイナスの出来事ではなく、企業の経営戦略の一環として選択されることもあるのです。

その他の事由

上場企業が株式上場廃止になる理由は、他にも以下のようなものが挙げられます。

  • 銀行取引や事業活動の停止など、経営の継続が困難になった
  • 破産手続きや再生手続きの開始決定を受けた
  • 反社会的勢力との関与が明らかになった など

このように、上場廃止の理由は多岐にわたります。金融商品取引所は、投資者保護と市場の公正性や透明性を維持するために、上場企業を厳しく監視しています。

保有している株式が上場廃止すると起こること

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保有している株式が上場廃止すると、以下のような問題が生じます。

  • 整理銘柄に指定されて1ヶ月後には取引できなくなる
  • 企業の経営破綻によって上場廃止した場合は無価値化する

ひとつずつ押さえておきましょう。

整理銘柄に指定されて1ヶ月後には取引できなくなる

上場廃止が決定した銘柄は、すぐに取引できなくなるわけではありません。

まず「整理銘柄」に指定され、一定期間の猶予が与えられます。整理銘柄に指定されると、その旨が公示され、新聞の株式欄にも「整理」という区分で掲載されます。

銘柄は上場廃止され、取引所で売買できなくなるのは、整理銘柄への指定から原則1ヶ月後です。したがって、保有している株式が整理銘柄に指定された場合、1ヶ月以内に売却もしくは継続保有を決断する必要があります。

なお、上場廃止後は取引所で売買できなくなるだけでなく、株主としての権利行使も制限される場合がある点に注意が必要です。

企業の経営破綻によって上場廃止した場合は無価値化する

企業が経営破綻によって上場廃止になると、保有している株式は無価値化する可能性が高くなります。そして経営破綻した場合、企業は法的整理手続きである破産手続きや民事再生手続きを申請することがあります。

破産手続きに入った後の流れは、以下のとおりです。

  1. 株式を含む企業の資産が売却される
  2. 売却代金が債権者への弁済に充てられる

破産手続きによる売却代金の分配の際、株主は債権者よりも弁済の順位が低いとみなされるため、売却代金の分配を受けられる可能性は低くなります。また、民事再生の場合も株主の権利は大幅に制限され、株式の価値が大きく損なわれます。

経営破綻による上場廃止は、株主にとって最悪の事態です。そのため、企業の財務状況や経営の健全性を常にチェックし、危険を早期に察知する必要があります。

上場廃止した株式で儲かる可能性があるケース

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上場廃止した株式は損失となる可能性が高い一方で、場合によっては儲かるケースもあります。具体例は、以下のとおりです。

  • TOBの対象となるとプレミアム価格がつく
  • 一部の投資家から投機目的で購入される

ひとつずつ押さえておきましょう。

TOBの対象となるとプレミアム価格がつく

株式が上場廃止になると一般的に株価は下落するため、保有者は損失を被る可能性が高いです。

しかしTOBの対象となった銘柄は、プレミアム価格で買い取られて株主の利益につながる可能性があります。TOBとは「株式公開買付け」のことで、買付者が条件を公表したうえで、取引所を介さずに株主から直接株式を買い付ける手続きのことです。

TOBで買付者が提示する条件

  • 公開買付期間
  • 買付価格
  • 買付予定株数

TOBを行う買付者は既存株主の利益を考慮し、市場価格よりも高いプレミアム価格を提示する傾向があります。つまり、保有する株式がTOBの対象となった場合、そのプレミアム価格で売却することで市場価格との差額分の利益を得られます。

ただし、TOBへの応募は強制ではないため、利益になるかどうかに基づいて判断しましょう。

一部の投資家から投機目的で購入される

整理銘柄に指定された銘柄は、一般的に投資家の売却が先行し、株価が大きく下落する傾向が見られます。しかし、一部の投資家はこのような状況下でもわずかな株価の上昇を狙って株式を購入することがあります。

投機目的とも言える買付方法ですが、わずかな値上がりでも大きな利益率を得られることから、珍しい話ではありません。

ただし、この手法はハイリスク・ハイリターンであり、株価が予想通りに上昇しないと大きな損失を被ってしまいます。とくに、倒産や100%減資となる銘柄では株式が無価値になるリスクがあるため、原則として避けるべき投資手法です。

株式の上場廃止に関するFAQ

株式 上場廃止 よくある質問と回答

最後に、株式の上場廃止に関してよくある質問に回答します。

Q.上場廃止した株式が再上場する可能性はありますか?

可能性は十分にありますが、金融商品取引所の上場審査に再び通過しなければなりません。また、再上場を目指す際に受ける審査では、状況によっては追加の審査項目が課されることもあります。

例えば、MBOで上場廃止になった後に再上場する場合、MBOと再上場の関連性の高さや、MBO時のプレミアム配分の適切性などが精査されます。ハードルは高いですが、審査をクリアできれば上場廃止から再上場を果たすことは可能です。

Q.上場廃止した株式は持ち続けると儲かりますか?

投資家の売却が先行して需要が減少するため、多くの場合は株価が急落します。

そして上場廃止後は、取引所での売買ができなくなるだけでなく、株主としての権利行使も制限される可能性があります。したがって、上場廃止銘柄を持ち続けることで利益を得られる可能性は低いと言えるでしょう。

Q.上場廃止した株式はいつ売るのがいいですか?

リスクを最小限に抑えるために、なるべく早く売却するのが賢明です。株価は通常、上場廃止の決定後に大きく下落するためです。

とくに、整理銘柄に指定されてから上場廃止までの1ヶ月間で売却しないと取引所での売買ができなくなり、換金は難しくなります。

Q.株式の上場廃止後、TOBに応じないとどうなりますか?

上場廃止後もTOBに応じない場合は、信託銀行で金銭交付の手続きをしなければなりません。また、他の株取引との損益通算ができなくなったり別途確定申告が必要になったりするなど、税務面でのデメリットもあります。

さらに、TOB後に買付者が強制的に株式を取得する「スクイーズアウト」が行われる可能性もあります。スクイーズアウトが行われた場合、強制的に指定された価格で売却することになるため注意が必要です。

Q.上場廃止した株式が売れない場合はどうすればいいですか?

上場廃止後、株式を売却できない場合の選択肢の一つは、発行会社に直接買取りを交渉してみることです。ただし、発行会社には法的な買取り義務はないため、交渉が成立するとは限りません。

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