遺品整理で古い株券が出てきたらどうする?電子化してない場合は?

株券が出てきた 遺品整理

遺品整理の際に電子化されていない古い株券が出てきたものの、処分方法がわからず困っている方もいるのではないでしょうか。古い株券を適切に処分しないと現金化できなかったり、追徴課税が発生したりする可能性があります。

本記事では、遺品整理で出てきた古い株券の処分方法を解説します。お困りの方はぜひ参考にしてください。

目次

遺品整理で古い株券が出てきたときの処分方法

古い株券が出てきた 処分 方法

遺品整理で古い株券が出てきたときは、以下の手順で処分するのが一般的です。

  1. 株券が上場株なのか非上場株なのかを調べ、その価値を確認する
  2. 遺言書の内容に従って処分する。遺言書がない場合は、遺産分割協議で株式の分割について決める
  3. 株式の名義変更手続きを行う
  4. 相続した株式を売却して現金化する

ここからは、出てきた株券の処分方法について、よくあるパターンごとに解説します。自分に近い状況があれば、ぜひ参考にしてみてください。

上場株式の場合

上場株式の場合は、まず被相続人が取引していた証券会社に連絡し、取引残高証明の発行を依頼しましょう。以下の書類が遺品から見つかれば、証券会社でスムーズに確認できます。

  • 取引口座の開設控え
  • 取引報告書
  • 残高証明書
  • 特定口座年間取引報告書

上記の書類が見つからないときは、株券に記載されている発行会社に問い合わせます。

多くの場合、信託銀行など株主名簿管理人となっている金融機関が株式を管理しているためです。株主名簿管理人とは、株式発行会社から委託を受けて株主名簿の作成・管理などを代行する専門機関のことを指します。

発行会社に問い合わせても株式の所在がわからない場合は、証券保管振替機構(通称:ほふり)に調査を依頼しましょう。

非上場株式の場合

非上場株式は証券取引所での取引がないため、取得方法が決まっていません。そのため、株式発行会社に直接問い合わせて、株券の価値や残高証明書の発行を依頼する必要があります。

また、株券以外にも被相続人の自宅にて株券・株主総会招集通知・株主名簿記載事項証明書などを探してみてください。これらの書類が見つかれば株式の発行会社に紹介状を発送し、回答を求めます。

なお、2004年の会社法改正により株券を発行しない会社が増えています。相続人が生前に株主だったと思われる会社に、被相続人が確認を取りましょう。

非上場株式の相続手続きは、上場株式に比べて複雑になる傾向があります。とくに、株式の価値評価については専門的な知識が求められます。

非上場株式の評価方法については、以下の記事で詳しく解説しているため、気になる方はぜひご覧ください。

非上場株式の相続手順・株式の評価方法・払えない時の対処法について

また、非上場株式は証券取引所を通じた売買ができないため、自分で株式購入者を見つける必要があります。

非上場株式の売却方法については以下の記事で詳しく解説しているため、気になる方はこちらもご覧ください。

非上場株式を売りたいときの売却方法4選|買取りしてもらうときの手順も解説

紙のままで電子化していない株券が出てきた場合

遺品整理で出てきた紙のままの株券を処分する際は、特別口座から相続人名義の証券口座に株式を移す必要があります。

2009年1月5日以降、上場会社の株式は電子化され、紙の株券は無効となりました。したがって、上場会社の株主は「振替口座簿」の記載変更という電子的な方法でのみ、株式の譲渡が可能となっています。

なお、電子化の対象となったのは上場株式のみで、非上場株式は対象外です。

電子化の際に証券保管振替機構に移行されなかった株券は、発行会社が指定した金融機関に「特別口座」として管理されています。そして特別口座では株主としての権利は保たれるものの、株式の売買はできません。

そのため、紙の株券の売却や相続の際は、特別口座から相続人名義の証券口座へ株式を移す必要があります。株式を移す際は特別口座を管理する金融機関に、特別口座の口座振替申請書を提出します。

単元未満株の場合

株式分割などで発生する端数の株式である単元未満株もまた、証券取引所での売買ができません。そのため、株主が単元未満株を現金化するためには、発行会社に対して買取請求を行使して端株を売却する必要があります。

上場企業では、定款で一定数の株式をまとめて1単元とする「単元株制度」を採用しています。1単元の株数は銘柄によって異なり、多くの企業では100株もしくは1,000株としています。例えば、1単元が100株の企業で130株を保有している場合は、100株が単元株で30株が単元未満株となります。

遺品整理で単元未満株が見つかった際は、そのまま発行会社に買取請求を行い、同時に未払いの配当金も受け取れます。買取請求の具体的な方法は、発行会社や株主名簿管理人である信託銀行に確認しましょう。

遺品整理で古い株券が出てきたときの注意点

株券が出てきた 注意点

遺品整理で古い株券が出てきた際は、以下3点に注意する必要があります。

  1. 発行会社の倒産などによって価値がなくなっている可能性がある
  2. すぐには換金(現金化)できない
  3. 放置すると相続税のペナルティなどのリスクがある

ひとつずつ押さえておきましょう。

発行会社の倒産などによって価値がなくなっている可能性がある

株式は、発行会社の倒産や破産手続き開始などによって無効化します。株式が無効になったことで損失が生じた場合、原則として他の株式等の譲渡益や給与所得など他の所得からは控除できません。

ただし、以下3つの要件をすべて満たしている場合に限り、みなし譲渡損が認められます。

  1. 特定口座内で保有していた上場株式であること
  2. 特定管理口座に移管され、振替口座簿に引き続き記載または記録されていること
  3. 清算決了等の一定の事実が生じて株式としての価値を失っていること

無価値化した株式が上記の要件を満たしている場合は、その損失分を他の所得と相殺できる可能性があります。

すぐには換金(現金化)できない

遺品整理で出てきた古い株券は、現金化に時間がかかります。

相続した株式を換金するには、まず名義を被相続人から相続人に変更する必要があります。上場株式の場合は証券会社で、非上場株式の場合は発行会社に直接申請しましょう。

名義変更手続きの際は、戸籍謄本や遺産分割協議書などの書類を揃える必要があり、通常1ヵ月程度の時間を要します。しかし、名義変更手続きが完了しないと、株式の売却はできません。

また、単元未満株の場合は証券取引所での売買ができないため、発行会社に買取請求する必要があります。

さらに、株式が株券の場合は特別口座に保管されている可能性があります。その際は、特別口座から証券口座への振替手続きが必要となるため、売却までにはさらに時間がかかるでしょう。

このように、相続した株式をすぐに現金化することは難しいため、時間がかかる点を踏まえたうえで資金計画を立てる必要があります。

放置すると相続税のペナルティなどのリスクがある

遺品整理の際に出てきた古い株券を放置すると、相続税の追徴課税が発生する可能性があります。

株式は相続財産の一部であり、相続税の課税対象です。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に設定されています。

期限までに正しく申告や納税をしない場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが科されるリスクがあります。無申告加算税と延滞税の税率は、以下のとおりです。

  • 無申告加算税
    ⇒納付すべき税額に対して15〜20%加算される税
  • 延滞税
    ⇒納付期限から納付までの期間に応じて、納付すべき税額に対して年2.4〜8.7%

また、相続税の申告漏れが判明した場合は、修正申告を求められる可能性もあります。したがって、遺品整理で株券が見つかった場合は、速やかに申告と納税を行いましょう。

株式を放置した際の対処法については、以下の記事で詳しく解説しているため、気になる方はご覧ください。

株式を所有者の死亡後も放置するとどうなる?発覚時の対処法は?

古い株券が出てきたときのFAQ

古い株券が出てきた よくある質問と回答

最後に、古い株券が出てきた際によくある質問に回答します。

Q.古い株券に時効はありますか?

株式の相続自体には時効がありません。つまり、被相続人の死亡後10年以上が経過してから株券が見つかった場合も、相続の権利は失われません。ただし、配当金は受け取り期限があるため、過ぎている場合は受け取れなくなります。

一方、相続税には時効があります。被相続人の死後10年を経過してから発覚した財産については、相続税が課されません。

ただし、税務署から督促状が届いた時点で時効はリセットされます。したがって、時効を理由に相続税の支払いを避けることは、実質的には不可能です。

例外として、10年以上前に亡くなった方の隠し口座が見つかった場合は相続税の時効成立につき、納税する必要はありません。しかし、その株券は一時所得に含まれるため、所得税の対象となります。

古い株券が見つかった際は時効の有無にかかわらず、適切な手続きを行いましょう。

Q.古い株券が非上場株式だった場合も電子化の手続きをする必要はありますか?

非上場株式は、電子化する必要はありません。2009年1月5日より電子化の対象となったのは、上場株式のみであるためです。

非上場株式の相続や譲渡は、従来どおり紙の株券によっても行えます。

ただし、2004年の会社法改正により、非上場会社も株券を発行する必要がなくなりました。そのため、必ずしも紙の株券が存在するとは限りません。

したがって、非上場株式の存在を確認する際は、発行会社に直接問い合わせる必要があります。

Q.出てきた株券は今から特定口座に入れられますか?

2005年度の税制改正により、出てきた株券を特定口座に入れられるようになりました。この改正はいわゆる「タンス株」と呼ばれる、投資家が自宅などで保管している株券を特定口座に受け入れることを目的としています。

この制度では、電子化への移行が忘れられていた株券も特定口座へ入れられます。ただし、特定口座へ入れる際は、取得日や取得価額を証明する書類の提出を求められる可能性があります。

詳細な手続きについては、証券会社などの金融機関に問い合わせてみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次