株式を譲渡契約するには?

目次

株式譲渡契約書作成方法

株式譲渡契約書

株式譲渡契約書とは、会社の株式を売主から買主に対して譲渡する際に、譲渡人と譲受人との間で締結するという内容が記載された合意書面です。

株式譲渡契約書に記載する事項


株式譲渡契約書に記載する基本的な事項を上げておきます。

□譲渡する株式の種類、数、価格、支払方法など
□株式の所有権変更を会社の株主名簿に反映(名義書換)
□譲渡制限株式の承認など、株式の特殊性に関する事項
□契約解除や損害賠償に関する項目

名義変更


名義書換は、株式を売る人から買う人への所有権移転を会社の株主名簿に記録する手続きです。この更新によって、新しい所有者が株主として認められ、株主の権利を行使できます。株式譲渡契約をする際は、トラブル防止のためにこの手続きの内容を正確に把握し、慎重に進める必要があります。

表明保証

株式譲渡契約書には、表明保証という重要な項目があります。これは、売主が買主に対して、株式や発行会社に関する内容が真実である事を保証する項目で、特に表明保証に相違する事実が判明した場合の賠償責任については、必ず明記しておきます。

株式譲渡契約書面における5つの項目

1.  譲渡合意
2.  譲渡代金の支払い方法
3.  株の所有権が変わった際に、その変更を会社の株主名簿に反
映させる手続き(名義書換)
4.  株式や発行会社に関する内容が真実である事を保証する項目(
表明保証)
5.  契約解除
その他

1.譲渡合意


株式取引の主な内容を記載する項目です。具体的には、○○年○月○日、どの会社のどのような株式を○○株譲り受けるかを記載します。これらの内容は契約締結前に決定しますが、当事者間の認識に違いが生じる場合がないとも言い切れません。

2.譲渡代金の支払い方法

譲渡代金の支払い方法の項目には、譲渡代金と支払期日、振込先口座などを記載します。

尚、現金で支払いを行う場合など、振込先口座の記載が必要ない場合もあります。無償譲渡の場合には、譲渡代金の支払い方法の条項を省略して下さい。

3.株主名簿の名義書換

この項目は、株式譲渡契約成立後に株主名簿の名義書換を行う為に必要な項目です。

株式の譲渡手続きは、新しい所有者(譲受人)の名前が会社の株主名簿に書き換えられることで完了します。株券を発行しない会社では、この名前の書き換え(名義書換)を行うためには、通常、譲渡する人(譲渡人)と受け取る人(譲受人)が一緒に申請する必要があります。

譲受人としては、万が一、名義書換について譲渡人の協力を得られない場合には、裁判手続きにより、名義書換請求を命じる確定判決などを得て単独で行わなければならなくなるので、そのようなリスクを回避するのに役立ちます。

株式を他の人に移す時、その会社が特別なルールを持っている場合(譲渡制限会社)、会社の許可が必要です。だから、株を受け取る人は、この許可がきちんと得られるかを確認する必要があります。そのために、株を譲る人にこの手続きをしっかり行うよう、契約書に書くことが大事です。

尚、株式の譲渡を承認するか否かを決定する機関は、取締役会設置会社では取締役会、それ以外の会社では株主総会であるのが原則ですが、定款で別段の定めがある場合もあります。

4.表明保証

表明保証とは、株を譲る人が、特定の大切な情報が正しいことを保証することです。表明保証条項には、譲渡人が譲受人に対して、ある特定の事項が真実かつ正確である事を表明し保証する旨を記載します。

例えば、株式譲渡にかかる株式の所有者が譲渡人でない場合や、開示された対象会社の資産状況が実際とは異なっていた場合など、不測の事態が生じる事で譲受人が思わぬ損害を被らないようにする役割を担うもので、株式譲渡契約書では最も重要な項目です。

株式の譲渡の目的や詳細によって、どんな保証をするかは変わります。全ての株式譲渡で同じ保証が必要というわけではないですが、よくある保証としては、例えば株式が正しく発行されている事、株式に関する法的な問題がない事などがあります。

〈表明保証の例〉


□株式譲渡契約の締結及び履行につき、必要とされる一切の手続を履践していること。

□譲渡対象株式が適正、適法かつ有効に発行されたものであること。
譲渡人が譲渡対象株式の全てについて完全な権利者であり、対象会社の株主名簿に記載された株主であること。

□譲渡対象株式の全てについて抵当権、質権、譲渡担保権その他の担保権が設定されておらず、かつ、株主間契約その他の譲渡対象株式の譲渡又は譲渡対象株式に係る権利を制限する負担又は契約が存在しないこと。

□対象会社の「財務状況を示す表」や「収益と支出の計算書」などの重要な財務関連の文書が、公平な会計のルールに基づいて作られていること。これらの文書が内容的に正しく、会社の資産や借金の現状を正確に伝えていることが必要です。

□対象会社が、その財務内容に重大な影響を及ぼすおそれ、又は、譲渡対象株式の譲渡に実質的な悪影響を及ぼすおそれのある訴訟、調停、仲裁、仮差押え若しくは仮処分事件その他紛争の当事者になっていないこと。

5.契約解除

契約解除の項目は、どのような場合に株式譲渡契約の解除を認めるか(解除事由)を記載する項目です。

相手方の契約違反や表明保証違反が解除事由となることを明記する他、当該違反に対して契約解除と共に被った損害の賠償義務もあわせて記載します。

その他 競業避止義務

競業避止義務とは、譲渡側は譲受側の同一市区町村・隣接市区町村で、譲渡した事業と同じ事業を20年間行えないというものです。この法令は、譲受側の事業を阻害させないために存在します。

株式譲渡契約書の例

株式譲渡契約書の用紙のひな形は、インターネット上で無料でダウンロード出来るものもありますが、自分の事情に合わせて必要な修正や追加を行う必要があります。

まずは、主要な項目を2種類ご紹介します。
※株券不発行会社(株券を発行しない会社)であることを前提としています。

有償取引の株式譲渡契約書 例

株 式 譲 渡 契 約 書

山中 ゆう太(以下「甲」という。)と黒川 あつ子(以下「乙」という。)は、甲が保有する○○株式会社(以下「対象会社」という。)の株式を乙に譲渡することについて、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。
 
(譲渡合意)
第1条
甲は、○○年〇月○日(以下「本件譲渡日」という。)をもって、甲が保有する対象会社の普通株式○○株(以下「本件株式」という。)を乙に譲渡し、乙はこれを譲り受ける。
以上
 
(譲渡代金の支払い方法)
第2条
乙は、甲に対し、本件株式の譲渡代金として○○円(1株あたり○○円)を、本件譲渡日までに、下記の甲の指定口座に振り込む方法により支払う。
 

○○銀行○○支店 普通 口座番号*******
名義人 山中 ゆう太
 
(株主名簿の名義書換)
第3条
1 甲及び乙は、本件株式の譲渡後直ちに、共同して、対象会社に対し、本件株式を取得した乙の氏名及び住所等の株主名
簿記載事項を株主名簿に記載することを請求するものとする。
2 甲は、本件譲渡日までに、本件株式の譲渡について対象会社の承認を得るものとする。
 
(表明保証)
第4条
甲は、乙に対し、以下の事項を表明し保証する。
⑴ 本契約の締結及び履行につき、必要とされる一切の手続を履践していること
⑵ 本件株式が適正、適法かつ有効に発行されたものであること
⑶ 甲が本件株式の全てについて完全な権利者であり、対象会社の株主名簿に記載された株主であること
⑷ 本件株式の全てについて抵当権、質権、譲渡担保権その他の担保権が設定されておらず、かつ、株主間契約その他の本件株式の譲渡又は本件株式に係る権利を制限する負担又は契約が存在しないこと
⑸ 別紙に記載された対象会社の貸借対照表、損益計算書その他財務諸表が、公正な企業会計原則に従って作成されていること、その内容において適正であること、及び○〇年〇月〇日現在における対象会社の資産・負債の状況を正確に表示していること
⑹ 対象会社が、その財務内容に重大な影響を及ぼすおそれ、又は、本件株式の譲渡に実質的な悪影響を及ぼすおそれのある訴訟、調停、仲裁、仮差押え若しくは仮処分事件その他紛争の当事者になっていないこと
 
(契約解除)
第5条
1 甲または乙が本契約に違反した場合、相手方は、相当期間を定めて催告の上、本契約を解除し、違反者に対し、その損害の賠償を請求することができる。
2 前条の表明保証に相違する事実が判明した場合、直ちに本契約を解除し、甲に対し、その損害の賠償を請求することが出来る。
 
 
●●年●月●日

(住所)東京都●●区●丁目●●-●●号
(氏名) 山中 ゆう太 印
 

(住所)東京都●●区●丁目●●-●●-●●号
(氏名) 黒川 あつ子 印

無償取引の株式譲渡契約書 例

株 式 譲 渡 契 約 書

山中 ゆう太(以下「甲」という。)と黒川 あつ子(以下「乙」という。)は、甲が保有する○○株式会社(以下「対象会社」という。)の株式を乙に譲渡することについて、次のとおり契約(以下「本契約」という。)を締結する。

(譲渡合意)
第1条
甲は、○○年〇月○日(以下「本件譲渡日」という。)をもって、甲が保有する対象会社の普通株式○○株(以下「本件株式」という。)を乙に無償で譲渡し、乙はこれを譲り受ける。
 
(株主名簿の名義書換)
第2条
1 甲及び乙は、本件株式の譲渡後直ちに、共同して、対象会社に対し、本件株式を取得した乙の氏名及び住所等の株主名簿記載事項を株主名簿に記載することを請求するものとする。
2 甲は、本件譲渡日までに、本件株式の譲渡について対象会社の承認を得るものとする。
 
(表明保証)
第3条
甲は、乙に対し、以下の事項を表明し保証する。
 本契約の締結及び履行につき、必要とされる一切の手続を履践していること
 本件株式が適正、適法かつ有効に発行されたものであること
 甲が本件株式の全てについて完全な権利者であり、対象会社の株主名簿に記載された株主であること
 本件株式の全てについて抵当権、質権、譲渡担保権その他の担保権が設定されておらず、かつ、株主間契約その他の本件株式の譲渡又は本件株式に係る権利を制限する負担又は契約が存在しないこと
 別紙に記載された対象会社の貸借対照表、損益計算書その他財務諸表が、公正な企業会計原則に従って作成されていること、その内容において適正であること、及び○〇年〇月〇日現在における対象会社の資産・負債の状況を正確に表示していること
  対象会社が、その財務内容に重大な影響を及ぼすおそれ、又は、本件株式の譲渡に実質的な悪影響を及ぼすおそれのある訴訟、調停、仲裁、仮差押え若しくは仮処分事件その他紛争の当事者になっていないこと
 
(契約解除)
第4条
1  甲または乙が本契約に違反した場合、相手方は、相当期間を定めて催告の上、本契約を解除し、違反者に対し、その損害の賠償を請求することができる。
2  前条の表明保証に相違する事実が判明した場合。直ちに本契約を解除し、甲に対し、その損害の賠償を請求することが出来る。
 
 
●●年●月●日

(住所)東京都●●区●●-●●号
(氏名) 山中 ゆう太 印
 

(住所)東京都●●区●●-●●-●●号
(氏名) 黒川 あつ子 印

株式譲渡契約書に印紙税は必要?

株式譲渡契約であれば印紙税は不要ですが、対価を金銭で受領している旨の記載があれば、第17号文書の1の書類(売上代金にかかる金銭)として印紙税がかかります。

第5号文書から第20号文書までの印紙税額の一覧表

文書の種類印紙税額(1通または1冊につき)
5[合併契約書または吸収分割契約書もしくは新設分割計画書]
(注)1 会社法または保険業法に規定する合併契約を証する文書に限ります。
(注)2 会社法に規定する吸収分割契約または新設分割計画を証する文書に限ります。
4万円
6[定款]
(注) 株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限ります
4万円
(非課税文書:株式会社または相互会社の定款のうち公証人法の規定により公証人の保存するもの以外のもの)
7[継続的取引の基本となる契約書]
(注) 契約期間が3か月以内で、かつ、更新の定めのないものは除きます。
(例) 売買取引基本契約書、特約店契約書、代理店契約書、業務委託契約書、銀行取引約定書など
4千円
8[預金証書、貯金証書]200円
(非課税文書:信用金庫その他特定の金融機関の作成するもので記載された預入額が1万円未満のもの)
9[倉荷証券、船荷証券、複合運送証券]
(注) 法定記載事項の一部を欠く証書で類似の効用があるものを含みます。
(注)2倉庫証券には農業倉庫証券及び
   連合農業倉庫証券は含みません。
200円(非課税文書:船荷証券の謄本)
10[保険証券]200円
11[信用状]200円
12[信託行為に関する契約書]
(注) 信託証書を含みます。
200円
13[債務の保証に関する契約書]
注) 主たる債務の契約書に併記するものは除きます。
200円
(非課税文書:身元保証ニ関スル法律に定める身元保証に関する契約書)
14[金銭または有価証券の寄託に関する契約書]200円
15[債権譲渡または債務引受けに関する契約書]記載された契約金額が
1万円未満は非課税
1万円以上は200円
契約金額の記載のないものは200円
(非課税文書:記載された契約金額が1万円未満のもの)
16[配当金領収証、配当金振込通知書]記載された配当金額が
3千円未満は非課税
3千円以上は200円
配当金額の記載のないものは200円
(非課税文書:記載された配当金額が3千円未満のもの)
17 [売上代金に係る金銭または有価証券の受取書]
(注)1 売上代金とは、資産を譲渡することによる対価、資産を使用させること(当該資産に係る権利を設定することを含む。)による対価および役務を提供することによる対価をいい、手付けを含みます。
(注)2 株券等の譲渡代金、保険料、公社債および預貯金の利子などは売上代金から除かれます。
(例) 商品販売代金の受取書、不動産の賃貸料の受取書、請負代金の受取書、広告料の受取書など
記載された受取金額が
5万円未満非課税
5万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下600円
300万円を超え500万円以下1千円
500万円を超え1千万円以下2千円
1千万円を超え2千万円以下4千円
2千万円を超え3千万円以下6千円
3千万円を超え5千万円以下1万円
5千万円を超え1億円以下2万円
1億円を超え2億円以下4万円
2億円を超え3億円以下6万円
3億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下15万円
10億円を超えるもの20万円
受取金額の記載のないもの200円
(非課税文書:1営業に関しないもの、
2有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したもの)
[売上代金以外の金銭または有価証券の受取書]
(例) 借入金の受取書、保険金の受取書、損害賠償金の受取書、補償金の受取書、返還金の受取書など
記載された受取金額が
5万円未満非課税
5万円以上200円
受取金額の記載のないもの200円
(非課税文書:1営業に関しないもの、
2有価証券・預貯金証書など特定の文書に追記したもの)
18[預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳]1年ごとに200円
(非課税文書:1.信用金庫など特定の金融機関の作成する預貯金通帳、2.所得税が非課税となる普通預金通帳など、3.納税準備預金通帳)
19[消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳](注) 18号の通帳を除きます。1年ごとに400円
20[判取帳]1年ごとに4千円

(注1) 売上代金に係る金額と売上代金以外の金額が記載された「金銭または有価証券の受取書」は、その合計金額で50,000円未満かどうかを判断しますので、その合計額が50,000円未満の場合に非課税となります。

(注2) 印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)(PDF/329KB)は、国税庁ホームページからダウンロード出来ます。

最後に

株式譲渡契約は、会社経営に大きな影響を及ぼす可能性がある重要な契約ですので、判らない事案が生じたら、なるべく専門家の助言を受ける事をお勧めします。

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