株式の譲渡所得について

株式の譲渡所得は一定期間保有した場合には、特定口座を利用する事で一部非課税になる場合もあります。

また、株式を売却した際には、売却益に対して所得税や住民税が課税される可能性があります。

株式を売却する事によって得られる利益を株式の譲渡所得と言い「有価証券」とも言われています。 例えば企業同士の合併買収、M&Aの際、得た利益が全部株式譲渡所得になり、それら全てに税金がかかる事はありません。よく理解して上手く納税する必要があります。

目次

譲渡所得の計算

譲渡所得は、譲渡した株式の売却価格と購入価格の差額です。先ずは売却価格と購入価格を比較し、譲渡所得を計算します。

簡単な例として、1株を1,000円で購入し、1,200円で売却した場合、差額の200円が株式譲渡所得です。

一方、1株を1,200円で購入し、売却金額が1,000円の場合、譲渡所得はマイナス200円になります。

基本、譲渡所得がマイナスになった場合、税金は発生しません。買収した金額よりも売却した際の所得がプラスになった場合のみ課税対象となります。

例として、以下のパラメーターを考えてみましょう。

株式の取得価額 100万円

譲渡価額 150万円

手数料等の経費 10万円

まず、譲渡所得は以下のように計算されます。

譲渡所得 = 譲渡価額 – 取得価額 – 手数料等の経費

上記の例では、譲渡所得 = 150万円 – 100万円 – 10万円 = 40万円です。

次に、譲渡所得税を計算します。株式譲渡所得は一般的には20%の税率が適用されますが、所得金額によって税率が異なる場合もあります。

譲渡所得に対して15%の税率により所得税が課されます。

さらに、住民税は5%の税率で課税されます。

平成49年分(西暦2037年で、令和19年)までの所得については2.1%の復興特別所得税が課税される事もあります。

2021年度時点での主な税率は以下の通りです。

◇     個人に対する特別徴収税率:20.315%

◇     法人に対する特別徴収税率:20.42%〜(最高23.20%)

これらの税金は申告分離課税により計算されます。

株式譲渡所得は申告分離課税である

配当所得の課税方法には「総合課税」と「申告分離課税」の2種類があります。

申告分離課税と総合課税は、所得税の課税方式の一部分ですが、株式譲渡所得は原則として申告分離課税が適用されます。

申告分離課税は、所得税の税制の一つで、世帯の夫婦が合算ではなく個別に所得を申告し、個別に課税される仕組みです。

申告分離課税では、株式譲渡所得を他の所得とは別に計算し、専用の税率を適用します。

一方、総合課税では、様々な所得を合算して一括で計算し、一定の控除額を適用した後に課税されます。

(ただし、詳細な情報は税務専門家や税務署にお問い合わせ下さい。)

例えば、上記の例で譲渡所得が40万円の場合、20.315%の税率が適用されるとします。

譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率

上記の例では、譲渡所得税 = 40万円 × 20.315% = 81,260円です。

株式の譲渡にかかる課税

株式の譲渡に係る課税には以下のようなものがあります。

譲渡所得税

株式の売却益が譲渡所得として課税されます。売却価格から取得価格(購入時の価格や取得費用)を差し引いた金額が譲渡所得となります。譲渡所得税率は所得税の一部として計算されます。

源泉徴収税

株式取引所などが株式の譲渡代金から所得税の一定割合を源泉徴収する場合があります。源泉徴収税は譲渡所得税

前納として扱われます。

特定口座譲渡所得税

特定口座(NISAや、つみたてNISAなど)での株式の譲渡益には、特定口座譲渡所得税が課される場合があります。特定口座譲渡所得税率は一般の譲渡所得税率よりも低く設定されています。

積立NISAで株式譲渡所得を得た場合の申告について説明します。

◆株式譲渡所得の計算

積立NISAで取得した株式を譲渡する場合、譲渡所得は以下のように計算されます。

 譲渡所得 = 譲渡価格 – 取得価格 – 譲渡に係る経費

◆確定申告

積立NISAにおいて譲渡所得が発生した場合は、確定申告が必要です。一般的に、所得税法の定めにより、譲渡所得が20万円以下の場合は確定申告の義務はありません。

※ただし、所得税の源泉徴収が行われていない場合や、税金の還付を受ける権利がある場合には、申告を行う事を推奨します。

住民税

譲渡所得には住民税が課されます。住民税は所得税とは別に個人が所在地の自治体に対して支払う税金で、不動産や株式などの資産を売却した際に課される譲渡所得に応じて計算されます。

譲渡所得税額に応じて住民税を払うのは、所得に応じた税の累進的な仕組みに基づいているからです。所得が高いほど税率が高くなるため、譲渡所得税が多い場合は、その分住民税も多くなるという事です。

具体的には、住民税は「基礎控除」という所得から一定額を差し引く仕組みがあります。譲渡所得税額が大きい場合、その分所得が増えてしまい、基礎控除の範囲を超えてしまう可能性があります。その結果、住民税が増える事になります。

住民税は個人の収入に応じて地方自治体に納める税金であり、譲渡所得税は国に納める税金ですが、税金の基本原則として所得に応じた累進課税が行われているため、譲渡所得税額が多ければ多いほど、住民税も増えるという関係があるのです。

会社員で株式譲渡所得がある

会社に勤めている場合、会社が年末調整の形で国に収入を申告するので、基本的に個人で取引して得られた株式譲渡所得に関する申告は不要です。

会社員の場合、給与所得に対して源泉徴収された給与所得税や住民税が既に差し引かれているため、譲渡所得税とは別に追加で住民税を支払う必要はありません。

ただし、住民税は給与所得に対して課税されるため、給与所得が増えると住民税が増える可能性がありますが、それは譲渡所得税とは異なる要素となって来ます。

会社員で申告が必要な場合

下に該当する場合は、申告が必要となります。

□会社員としての収入の他に、株式譲渡所得だけで20万円以上の所得がある。

□株式譲渡所得のみで生計を立てている場合、配当金などを含めて20万円以上の所得がある。

税務申告

譲渡取得は所得税の対象となるため、税務申告が必要です。申告期限までに適切な申告書類を作成し、税務署に提出して税金の支払いも忘れずに行って下さい。

適切な書類の準備

必要と思われるような書類は前もって、原本なりコピーなりを控えて保管しておきましょう。

  • 譲渡された株式に関する取引履歴 
  • 証券会社から提供された譲渡価格などの書類

税務申告書の選択

株式の譲渡所得は、一般的には確定申告書の中の「特定所得の金額に関する特例申告書」を使用して申告します。

株式譲渡には、売却益が生じる場合、つまり取得価格よりも譲渡価格が高い場合は、その差額が譲渡所得として認識され、所得税がかかります。

一方、売却益が生じない場合、つまり取得価格と譲渡価格が同じか譲渡価格が低い場合は、譲渡所得は認められず、譲渡所得税はかかりません。

ですが、個人投資家の場合、譲渡所得が一定の非課税枠を超える場合は、超過分については所得税が課されます。また、住民税も合わせて課税される場合があります。

個人投資家の場合、譲渡所得が一定の非課税枠を超える場合は、以下のケースが考えられます。

複数の株式を譲渡、譲渡所得の合計が非課税枠を超えた場合

個人は、所得税法において、一定の非課税枠が設けられています。例えば、2022年の場合は、約400万円の非課税枠があります。もし、複数の株式を譲渡し、譲渡所得の合計が400万円を超える場合は、超過分について所得税が課されます。

特定口座における株式の売買により譲渡所得が発生した場合

特定口座とは、一定の条件を満たす投資口座のことで、国内株式の売買を行った場合は、その譲渡所得は非課税となります。

しかし、特定口座の場合でも、譲渡所得の合計が非課税枠を超える場合は、超過分について所得税が課されます。

株式を長期保有していたが、一定の条件を満たさなかった場合

一部の株式においては、長期保有による税制優遇措置があります。例えば、特定口座の売買による譲渡所得であっても、長期保有していた場合は非課税となる場合があります。

ただし、長期保有の条件を満たさなかった場合は、非課税枠を超える超過分について所得税が課されます。

このように、個人投資家の場合には、譲渡所得が非課税枠を超える場合に所得税が課される事があります。

尚、非居住者や法人の場合、特別な税率や課税方法が適用されるケースも生じ得ます。

特に、一定の期間保有した上場株式の売却には税率優遇措置が適用される事がありますので、それぞれの譲渡の種類に応じて申告方法を選びましょう。

税金の申告と支払い

株式譲渡の所得は、所得税に基づいて課税されます。申告には、所得税の確定申告書や所得税の特別徴収票などの書類が必要となります。

また、出口課税制度などの特例がある場合にはそれに対応した申告方法を選ぶ事が求められる事もあります。

出口課税制度

株式譲渡の所得において、出口課税制度を利用するケースがあります。

出口課税制度は、企業が製品を国外へ輸出する際に適用される税制を指します。この制度では、輸出品にかかる消費税や関税が免除され、企業は国際競争力を高める事が出来ます。

以下に具体的な例を挙げます。

  1. 上場企業の株式売却

上場企業の株式を保有している場合、売却時に出口課税制度を利用する事が出来ます。売却益に対して消費税や関税が免除され、より競争力がある価格で株式の売却が可能なのです。

2.ベンチャー企業の株式売却

ベンチャー企業の株式を保有している場合も、出口課税制度を利用出来ます。ベンチャー企業の成長性や将来の評価に期待が持たれており、出口課税制度を活用して売却価格を競争力のある値段に設定する事が出来ます。

3.投資ファンドの株式売却

投資ファンドが保有している株式を売却する際にも、出口課税制度を利用出来ます。投資ファンドは複数の企業の株式を保有しており、出口課税制度を活用する事で、ファンドのパフォーマンスが向上します。

ただし、各国の税制や法律によって異なる場合があるので、具体的なケースによっては専門家に相談してみるのが良いと言えます。 

譲渡所得に応じた税金の支払いが必要ですので、納期に注意しながら手続きを行いましょう。

確定申告書の記入

選択した税務申告書に必要な情報を記入します。これには、譲渡所得の金額や源泉徴収税の情報、その他必要な項目が含まれます。記入後には、確認を怠らないようにしましょう。

確定申告書の提出

記入が完了したら、税務署に所定の方法で確定申告書を提出します。提出期限に気を付けましょう。

関連書類の保管

譲渡した株式の売買契約書や取引明細など、関連する書類を保管しておく事が重要です。これらは税務署への確認や証明に必要となる場合があります。

関連書類を紛失した場合

株式を保有している会社や証券会社に連絡し、紛失した書類の詳細や状況を伝えましょう。

証券会社は、紛失した書類の再発行手続きが出来る所もあります。書類の再発行には手数料がかかる場合がありますので証券会社に確認してみて下さい。

書類の再発行手続きが完了した場合、新たに発行された書類を紛失しないよう保管して下さい。

将来への影響の考慮

譲渡所得は将来の所得に影響を与える可能性があります。この譲渡所得が他の収入と合算され税率が変化したり、他の手続きに影響を与える事があるからです。

そのため株式保有者は将来への影響を考慮して財務状況や将来の目標を計画し、資金の運用や負債の管理、投資の節約を組み立てる事は賢明です。

珍しいケース

株式の譲渡所得には幾つかの珍しいケースが存在します。

1.分割譲渡

    株式を一度にまとめて売らずに、異なる時期に分割して売却する方法があります。この場合、譲渡ごとに所得の計算と申告が必要になります。

    2.合併・分割

    会社が合併や分割を行うと、譲渡所得が生じる場合があります。株主に配られる新しい株式や現金といった形態で株主構成が変わるため、所得の計算や申告の方法も異なる場合があります。

    3.累積譲渡

    何度も株式を購入し、複数のタイミングで売却する場合には、譲渡所得の計算が複雑です。特に、購入した順番や購入価格といった情報が重要となります。

    株式投資においては、他にも様々なルールや例外が存在します。納税するにあたって適切な税務申告が行われるように、税理士や専門家のアドバイスを受ける事もお勧めします。

    以上の事を踏まえて、正しい手続きを行い、株式の譲渡所得による利益を少しでも多く得られるようにしましょう。

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